ガラス張りのような透明模型からうってかわって壁の多い模型に。最終案に近いかたちになっている。旗竿敷地に建つこの建物には、いわゆる外観はないと考えた方がいい。模型の周囲に黒く塗ってあるところが隣の建物の位置。それでも外観というのは建物の全体のバランスを調整するのには欠かせないもので、かなり検討を繰り返してきた。鼻のように下に伸びた部分は庇を兼ねた出っ張りだが、これは屋上のペントハウスの上に伸びた部分と呼応していて、内部でも傾いた壁が床にあたっている。この2つを別に呼応させる必要はない。けどペントハウスを例外的な部位とするよりは、全体にそういう性向があって、幾つかの場所にそれが現れているんだというつもりでいると、キッチンの換気扇フードも同じやり方で処理できることに気が付く。こういう「つもり」があるかないかで、その物の存在はずいぶんと変わってくる。そういう「つもり」でいるうちに全体にヴォリュームのあっちこっちをつまんだようになって、キュビスムの女の人の顔を思わせるものに。だから何だといわれれば、それまでなのだが、こういうのは次につながりそうで面白い。そこからの連想で、設計の参照空間、探索空間も勝手に広がっていく。2階のバルコニーは、斜め部分と垂直部分の出会うところを検討するうちに、欠き取るられている方が軽い感じがしていいということになって発生。これも最初からバルコニーを計画したかったわけではない。ガラス張りになっている2階部分では、以前に書いたように、隣のマンションの外壁を「借壁」している。半分外にいるような気分になると思う。
この模型は外装に布を貼っているが、実際は砂付きアスファルトルーフィングというのを貼って、微細な表面積を増やすようにしている。これは夏場、建物にじわっと汗をかかせるため。パラペットの周囲に散水用のチューブを這わせ、表面に水を流して気化させ、建物表面の熱を奪ってもらう。ルーフィングの角の収まりも、やっぱりつまんだような感じ。ツルツルピカピカの「玉」ではなく、ゴツゴツザラザラした「石」で行こうというのが、この模型を作ったあたりからはっきり意識されてきた。(よ)
最後の写真はアスファルトルーフィングの例。でも鱗状にはしないつもり。